朝日連峰縦走




1日目
大鳥バス停〜タキタロウ小屋(5時間)

2日目
タキタロウ小屋〜大朝日岳山頂避難小屋(11時間)

3日目
大朝日岳山頂避難小屋〜五味沢(7時間)


体力が続かなくて弱音を吐きながら歩いてたのがほとんどの、情けない私の非力さやちっぽけさを、雄大でも素朴な朝日の峰々に抱擁してもらいながらのロングトレイルは想像以上に味わい深く特別なものになって心に響いたし、変化に富んだ大鳥の北部から五味沢まで南下する縦走はドラマチックで、決して多くない登山者との邂逅はロードムービーのようで個性的な人々との別れにいずれもぐっときた

実は今回の朝日連峰の縦走は5年越しでの実現だった

近年、登山の回数が減り、ろくにトレーニングをしていない私が、営業小屋の無い長大なルートを独りで歩くのはこれで最後になるかもしれないと思いつつ、福岡を飛び出してかねてより憧れがあった朝日連峰へ向かった

「しんどかったらとまれば良い、しかしとまってしまえば前にすすまない」
「やりたくなかったらやめれば良い、でもやらなかったら後悔するかもしれない」

人が生きてゆく過程での悩みの多くの中枢はきっとこのようなシンプルな自分との対話で、平々凡々な生活の私の場合、ソロハイクで露呈するから思慮深い
延々とつづく田舎の車道をとぼとぼと歩きながら、はたまた重いガスがかかる単調な尾根を惰性で進みながら、すべては自分が決めたことだという自由を恨みながら…酷い顔してそんな思想を巡らせ続ける

そして素敵なことに、つらければつらいほどに、出あえる美しい景色が必ずあるから、歩くということは松浦さんの言う通りに、とても人生的だ

朝日連峰での2日目、風に吹きさらされる視界20~30メートルのガス深い尾根をほとんど誰にも逢わず5時間ほどどんよりした気分で地道に歩いていたところに、西側の雲が取れ、自分の進む道、歩いてきた旅路、遠くに広がる山脈が見えた瞬間があった
おおらかでなだらかな山容が美しくて鳥肌がたって、心が踊った
ほとんど、コースタイム通りに到着した大朝日岳避難小屋では、夕焼け、星空、山形市の夜景、日の出を堪能し、いずれも華美すぎない心地よい静けさのなかに浮かんでいて、とても贅沢な時間を過ごせた

トレーニング不足のうえに下り坂の天候を懸念して無理矢理短縮して縦走したことで、満身創痍の下山で、もうしばらくは縦走はいいやーなんて苦笑いしながらも、できたらまた、この様な機会に恵まれればと願ってるのが私の本音だ

見ず知らずの私に親切にしてくださった避難小屋の管理人さんたちと登山者の方々、五味沢の民宿さいとうの方々、あさひ交通の運転手さん、見守ってくれた友人らへ心より感謝